心理士は、クライエント様と人間関係を築くことが、仕事です。

お困り事についてお話をして頂く。そのお話を聴かせて頂く。

それを通して、少しずつ少しずつ、人間関係を築いていく。

そのやり取りの中で、クライエント様が、何かに気付く。
その気付きが、行動変容につながっていけば・・・
そんな理論の上に、この仕事はあります。

これは一般の生活でもそうですが、
人と人間関係を築いていこうというときに、
人間として、人の話をただ聞いてるだけ、というのは、
それは、「相手のお話に興味関心を持っている」とはいえません。

「へー」とか「ふーん」とか「そーなんだー」とか言って、
人の話を右から左に聞き流している人がなんと多いことか、
カウンセリングの勉強をし、傾聴訓練を受けたことがある方なら、
どなたでも既に、お気付きになっていることでしょう。

しかし、カウンセラーを名乗っている人の中にも、
「聞いてるだけ」の方がかなりおられるようなのです。

前述しましたが、
「前のカウンセラーはただ聞いてるだけだったんですよね・・・」
という苦情をおっしゃり、私の元へご来談下さった方が
たくさんおられるのです。

ということは、かなり多くのカウンセラーが、
来談者中心療法を使う=聞いてるだけ
という構図になってしまっていた可能性が高い。

いえ、来談者中心療法は、質の高い、正統派の精神療法です。
時間は掛かっても効果が高い療法であり、
素晴らしき「古い海」というものです。

しかしながら、心理士としてというよりも、
普通の人間として、相手のお話を伺っているときに、
「なんでそう思ったのかな?」
「もう少し詳しく聞きたいな」ということがある。

当然、心理士としてなら、なおさらある。

それでも、ただ口を挟まずひたすら聴くのも、悪くはない。

ただ、何の質問もされず、アドバイスもされず、
何回通っても、ただただ聴いているだけのカウンセリングをされるのは、
多くのクライエント様にとって、苦痛になるのは事実のようです。

心理士は、圧倒的な知識を持っていようとも、
やっぱり「カウンセリングバカ」じゃ、務まりません。

普段の生活から、普通の人間関係を、良好に築ける人間で在らねばならない。

それができていれば、カウンセリングでの人間関係も築けるはずだし、
害すことも防げるはずである。

カウンセリングでは、
適度に、そして邪魔にならないタイミングで、
クライエント様に「もう少し、ここを伺いたい」と思う観点を、
ほんの少し質問して差し上げたいものです。

これが、いかに難しいか。

「あーー!そうそう!それが話したかったのー!」というところを、
絶妙なタイミングで、点で突いていく。

そんな質問が、できるか?

できそうで、意外と難しいものです。

古い海は、大事です。

けれども、来談者中心療法において、
「傾聴」=「質問しない・してはならない」ということとは解釈が違う。

かといって、当然、質問攻めもいけない。
根掘り葉掘りも、言語道断。

かといって、何も尋ねず、何のアドバイスも言わず、
ただ相槌を打っているだけの人間関係って、
普通の社会だったら、変ですよね?

変ではないにせよ、人間関係が深まっていかない。

それは心理士も同じです。

60分応答を続ける中で、カウンセリングの理論を駆使しながら、
いかに自然に、会話のキャッチボールをしていくか。

その応答に、何かを気付かせ、何かを築かせるものを、乗せていく。

そういう深さを、カウンセリングは、持っているものです。


 

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